研究概要 |
寒地型イネ科牧草はフルクタンを茎葉に蓄積するが,その含量は越冬性とともに飼料品質の向上と深く関わっていることが知られており,フルクタン代謝に着目することは,越冬性に優れ,高品質かつ高機能なイネ科牧草品種の開発には極めて重要である。そこで,(1)イネ科牧草遺伝資源におけるフルクタン含量の遺伝的変異を明らかにする。(2)フルクタン代謝に関わる遺伝子およびデータベースのゲノム情報から設計した候補遺伝子のマッピングを行い,フルクタン含量のQTL解析から有用なDNAマーカーを選定する。(3)フルクタン合成遺伝子の形質転換植物を作り出して,その遺伝子の機能を明らかにする。以上のゲノム情報を活用した研究から,高品質・高機能なイネ科牧草育種素材の開発を図る。 本年度は(1)オーチャードグラス遺伝資源においてフルクタンが主成分である可溶性炭水化物の含量の変異を調査し,その変異が大きいことを明らかにした。含量の多い個体間および高含量個体と低含量個体間で交配を行った。(2)コムギのフルクタン合成遺伝子(SFT, SST)の断片をプローブにしてペレニアルライグラスのcDNAライブラリーからペレニアルライグラスのフルクタン合成遺伝子を単離し,その塩基の配列を決定した。また,コムギのフルクタン合成遺伝子のゲノム情報からプライマーを設計し,その候補遺伝子は連鎖群7の上部にマップすることができた。(3)ペレニアルライグラス懸濁細胞系では,CaMV35Sプロモーターおよびアクチンプロモーターともに利用できることが明らかになり,コムギ由来フルクタン合成遺伝子を35Sプロモーター系のベクターにつないだ遺伝子導入プラスミドを構築した。ビアラフォス耐性遺伝子を選抜マーカーにし,パーティクルガンによるコトランスフォーメーション法で遺伝子導入を開始して,形質転換植物を作出した。
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