研究概要 |
寒地型イネ科牧草のフルクタン含量は越冬性と飼料品質の向上に深く関わり,その代謝に着目することは,越冬性に優れ,高品質かつ高機能な品種の開発に重要である。そこで,フルクタンに関するゲノム情報を活用しながら,高品質・高機能なイネ科牧草育種素材の開発を図ることを目的とした。 本年度は,(1)オーチャードグラスにおいてフルクタンが主成分の可溶性炭水化物(WSC)含量で選抜した個体を多交配してWSC高含量系統を育成し,WSC含量は標準品種より4%以上向上した。(2)低温馴化冠部由来cDNAライブラリーからフルクタン合成に関与する既知遺伝子と相同性の高い6種類の完全長cDNA(prft1〜prft6)を単離した。prft1とprft2は低温馴化過程で葉部と冠部での遺伝子発現量が増加し、形質転換酵母の試験から,ともに1-FFT遺伝子であることを明らかにした。一方、prft3は6G-FFT遺伝子であることを同定した。1-FFTと6G-FFTに関しては初めての遺伝子単離である。さらに、prft4は既報の1-SST遺伝子であることを確認した。(3)連鎖解析集団内で多型検出が可能なprft1、prft3、prft4のPCRベースのマーカーを作成した。prft3は第3連鎖群(LG3)に座乗し、prft1、prft4はLG7のインベルターゼ遺伝子の近傍に座乗した。越冬前冠部組織のおけるフルクタン含量については、LG1、LG2、LG4に重合度8以上の高分子フルクタンのQTLが検出されたが、フルクタン合成遺伝子のマッピング位置とは一致しなかった。(4)コムギ由来のフルクタン合成酵素(6-SFT、1-SST)をコードする遺伝子を過剰発現させたペレニアルライグラス形質転換植物では耐凍性が向上したことから、フルクタン合成酵素遺伝子を導入することにより植物の耐凍性を向上できることを明らかにした。
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