研究概要 |
1.脂肪交雑形成能力の異なる牛群(脂肪交雑形成能力が極めて高いことが判明している黒毛和種種雄牛「糸福号」由来の体細胞クローン牛群とその能力が極めて低いホルスタイン種牛群)間での、8〜14ヶ月齢の最長筋におけるmRNA発現量の差を調べ、発現パターンが異なる74個のバンドを明らかにした。 2.それらのバンドをシーケンスし、ホモロジー検索を行うことで、35個の機能既知遺伝子と42個の未知遺伝子を明らかにした。 3.リアルタイムPCRによる発現パターン情報と機能情報から、5つの候補遺伝子(BTG2、EDG1、TTN、VAPA、WBP2)を脂肪交雑責任遺伝子として選抜した。 4.クローニングおよび塩基配列の決定、並びにデータベースの検索を行うことにより、BTG2、EDG1、XM611598(VAPAと考えられていた遺伝子)およびWBP2のウシゲノム構造を明らかにした。 5.ゲノム構造に基づき、エキソンおよびプロモーター領域(約2kb)をカバーするプライマーの設計を行い、PCRダイレクトシーケンスによる高脂肪交雑能力牛群と低脂肪交雑能力牛群間のゲノム塩基配列の比較を行ったところ、EDG1(5'非翻訳領域の166bpと3'非翻訳領域の3,698bp)、XM611598(プロモーター領域の-1,723bp、翻訳領域の524bp、3'非翻訳領域の1,192bp)、およびWBP2(プロモーター領域の-72bpと-1,702bp)にSNPが検出された。 6.EDG1については、黒毛和種種雄牛63頭および優良種雄牛を父に持つ種雄牛4頭の後代肥育牛283頭のBMS育種価との相関解析により、166bpのSNPがウシ脂肪交雑形成能力に関与し、G対立遺伝子が脂肪交雑形成に対してプラスの効果をもっていることが示された。 7.XM611598およびWBP2では、黒毛和種種雄牛18頭のBMS育種価との予備的な相関解析を行ったが、ウシ脂肪交雑形成能力に関与するという証拠は得られなかった。 8.ウシ染色体へのRHマッピングを行ったところ、EDG1は脂肪交雑QTLが存在するゲノム領域に位置することが明らかにされた。
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