研究概要 |
近年,家禽のサルモネラ菌による感染が増加しているので,これの対策が急務となっている。平成14年度にはサルモネラ菌(Salmonella enteritidis;SE菌)が卵管粘膜表面から組織内へ侵入する特性があることを明らかにした。これが卵管に潜伏すると保菌卵が産卵されると考えられる。これまでに,卵管は内分泌依存性の免疫機能を発現することも示した。しかし,SE菌が卵管組織内に潜伏する機構と,組織内におけるSE菌と免疫応答との関連は明らかでない。本研究は,これを明らかにするために,(1)卵管組織内でSE菌に対して働く免疫応答の機構,および(2)卵管における抗菌ペプチドの発現を解析した。 SE菌を接種した卵管・卵巣の組織切片を作成して,SE菌,ヘルパー/炎症性T細胞(CD4),細胞障害性/サブレッサーT細胞(CD8)の免疫染色,ならびに抗菌作用があるアビジンに対する組織化学染色を施した。その結果,SE菌は卵管粘膜に侵入し,アビジン含有細胞とT細胞サブセットが増加し,これらがSE菌を除去することを示唆した。また,自然免疫に重要なナチュラルキラー細胞(NK細胞)を同定する免疫染色法とin situハイブリダイゼーション法を検討し,この細胞が卵管で検出されることを見出した。続いて,菌にNK細胞が応答するかどうかを追究する予定である。一方,新規な抗菌ペプチドとして知られるディフェンシンが卵管で発現する可能性をRT-PCR法とin situハイブリダイゼーション法で検討し,これの遺伝子が卵管各部の粘膜上皮または上皮下で発現することを見出した。現在組織培養法で卵管組織をSE菌に感作させ,この分子の発現が応答するかどうかを追究している。
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