研究課題
基盤研究(B)
ニューカッスル病は今なお世界中の養鶏産業に多大な経済的損失をもたらしている重要な疾病の一つである。本病の病原体であるニューカッスル病ウイルスの起源は野生の水鳥が保有する弱毒ウイルスであると考えられているが、このウイルスがどのような機序で鶏に対する病原性を獲得するのかは未だ明らかではない。そこで本研究ではその病原性獲得機構の分子レベルでの解明を目的として、まず、野生水禽由来弱毒ニューカッスル病ウイルスを鶏で実験継代した。その結果、鶏に対して致死率100%の強毒変異株を得ることに成功した。それら一連の変異株の解析から本ウイルスは継代に伴ってHN蛋白上の3つのアミノ酸が置換し、NA活性が著しく増強したことが判明した。さらに前年度には本ウイルスの病原性獲得に伴うHN蛋白の機能変化を明らかにする目的で、それらのアミノ酸置換とNA活性の増強との関わりについて解析した結果、HN蛋白の128番目のアミノ酸が本ウイルスの宿主特異性に関与している可能性が考えられた。そこで本年度はNDVの病原性とHN蛋白のNA活性との関わりを明らかにする目的で、一連の継代株間の病原性を感染実験により比較し、NA活性の変化との関連を解析した。鶏胎仔平均致死時間(MDT)、鶏脳内病原性値(ICPI)および鶏静脈内病原性値(IVPI)により病原性を比較した結果、NA活性の増強が本ウイルスの病原性の上昇に関与していることが明らかとなった。すなわち水禽由来弱毒NDVが鶏に伝播した場合、F蛋白開裂部位にアミノ酸置換が起こり、易開裂型に変化するのみならず、HN蛋白にもアミノ酸置換が起こり、そのNA活性が増強することによって、最も強い病原性を獲得することが示唆された。一方、それら一連の変異株の解析から本ウイルスは継代に伴ってHN蛋白上の3つのアミノ酸が置換し、NA活性が著しく増強したことが判明した。そこで本年度は本ウイルスの病原性獲得に伴うHN蛋白の機能変化を明らかにする目的で、それらのアミノ酸置換とNA活性の増強との関わりについて解析した。各発現HN蛋白のNA活性を比較した結果、9a4b株及び9a5b株では共に9a3b株と比較して3〜4倍の強いNA活性が認められた。我々は先の学会において9a4b株では128番目のアミノ酸がProからHisに、さらに9a5b株では495番目のアミノ酸がGluからLysに置換していることを報告した。これらの成績はそのうちの128番目のアミノ酸置換がNA活性の増強に関与していることを示している。そのアミノ酸はHN蛋白の3次構造上、NA活性部位から離れた場所に位置していた。また、その128番目のHisは鶏由来のNDVに非常によく保存されていた。従ってHN蛋白の128番目のアミノ酸が本ウイルスの宿主特異性に関与している可能性が考えられた。
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