研究概要 |
1.強毒トリインフルエンザイウルスは感染マウスの脳で持続感染する 強毒トリインフルエンザウイルスの経鼻接種により多くのマウスは脳炎によって死亡するが、生き残ったマウスの脳を調べたところ、接種後48日まで脳病変、ウイルス抗原およびウイルスRNAが残存していた(Vet. Microbiol.,2003)。インフルエンザウイルスは8本のRNA分節から成っているが、PB2を除く7本の分節がこれらマウスの脳組織中に証明され、インフルエンザウイルスが脳組織中に持続感染する可能性が示された。 2.強毒トリインフルエンザウイルスは末梢神経経由で中枢神経へ侵入する 1997年に香港でトリからヒトへ感染し、小児に致死的感染症を起こしたインフルエンザウイルス(A/Hong Kong/483/97(H5N1))と山陰地方の海岸へ飛来した野鳥の糞から分離したインフルエンザウイルス(A/Whistling swan/Shimane/499/83(H5N3))をマウスに経鼻接種すると、いずれのウイルスも経神経伝達によって脳へ到達し、致死的脳炎を起こすこと、伝達経路としては迷走神経が重要であることを報告した(Vet. Microbiol.,2003;Vet. Pathol.,2004 in press)。 3.解熱剤投与はトリのインフルエンザウイルス性脳炎を増悪させる これまでの我々の研究で、経鼻接種された強毒トリインフルエンザウイルスはトリでは血行性に、マウスでは経神経性に脳へ到達し、重篤な脳炎を起こす起こすことが分かった。そこで、これらのインフルエンザ脳炎モデルに解熱剤(アスピリンおよびボルタレン)を投与したところ、鶏でのみ明らかな病原性の増強効果がみられ、解熱剤投与はインフルエンザウイルスの血行性体内伝播を増強することが分かった(J. Vet. Med. Sci.,2003)。
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