研究課題/領域番号 |
14360183
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
廉澤 剛 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (70214418)
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研究分担者 |
滝口 満喜 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (70261336)
落合 謙爾 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (80214162)
笠岡 達彦 ノバルティスファーマ株式会社, 主任研究員
大泉 巌雄 中外製薬株式会社, 研究員
日下 雅美 武田薬品株式会社, 主席研究員
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キーワード | 腫瘍 / 腫瘍休眠療法 / 分化誘導 / 血管新生阻害 / 犬 / 臨床試験 / 腫瘍血管 |
研究概要 |
悪性腫瘍はいまだ致死率の高い難病であり、種々の抗癌剤の開発・研究が進められているが、そのほとんどが細胞毒性薬であるため、重篤な副作用により患者のQOLが損なわれることが多い。このため、腫瘍を根治するのではなく沈静化させることによって腫瘍と共存しQOLを維持しようとする腫瘍休眠療法(Tumor Dormancy Therapy)が注目されてきている。 そこで本研究においては、ともに生体への毒性が小さい血管新生阻害剤と分化誘導剤によって腫瘍のDormancyを誘導できないかどうかを、犬の腫瘍症例を用いて評価した。 対象症例は、北海道大学獣医学部および酪農学園大学附属動物病院に来院した腫瘍罹患犬のうち、飼い主と十分なインフォームドコンセントの上で治験の了解が得られた犬80頭以上であった。血管新生阻害/分化誘導作用を有する薬剤(TNP-470、OCT、およびサリドマイド)を試験的に投与するにあたっては、致命的な副作用を避けるために、安全な低用量から開始し、2週間投与後副作用を認めなければ投与量を漸増する方法を採った。 その結果、抗腫瘍効果に関しては、比較対象がないため腫瘍の成長速度や遠隔転移率を抑制しているかを明らかにすることは多くの症例で難しかったが、一部の症例で成長速度の低下や病巣の縮小を認め、また延命効果と考えられる長期生存例も認められた。一方、副作用に関しては、一部の症例において、TNP-470でふらつき、OCTで高カルシウム血症、サリドマイドで睡眠時間の増加を主として認めたが、いずれの症例においても重篤なものではなく、薬剤の減量あるいは投与中止によって回復した。 以上の結果から、今回使用した血管新生阻害剤と分化誘導剤は、腫瘍の縮小効果までを強く期待することは難しいものの、腫瘍の成長速度を低下させる効果を有すると思われ、また副作用も小さいことから、腫瘍治療の補助療法として検討に値すると考えられた。
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