小動物領域における新興マダニ媒介性リケッチアの疫学および病原性に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14360190
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 猪熊 壽 山口大学, 農学部, 教授 (70263803)
• 研究分担者: 細井 栄嗣 山口大学, 農学部, 助教授 (60263802) ; 奥田 優 山口大学, 農学部, 助手 (10325243)
• キーワード: マダニ / Ehrlichia / Anaplasma / Anaplasma platys / マダニ媒介性疾患 / 疫学

研究概要

平成14年度は小動物領域におけるマダニ媒介性疾患の疫学的研究のための材料収集の開始および感染実験のための病原体の検索を実施した。
1)マダニ材料の収集:これまで実施してきた研究過程のなかで既に確立されている全国の動物病院ネットワークを通じ、47都道府県の動物病院の協力を得て、約1400頭の犬と猫からマダニの採取を行い、マダニ種を同定した。その結果、わが国の犬にはフタトゲチマダニをはじめとする複数種のマダニが付着することが明らかになり、また今まで亜熱帯地方にしか生息の確認されなかったクリイロコイタマダニやヤマアラシチマダニが本州に定着することが明らかとなった。いっぽう猫寄生マダニはヤマトマダニ、タネガタマダニが優勢であり犬と異なる点が新しい知見となった。
2)マダニからのEhrlichiaおよびAnaplasma検索
同定後のマダニ材料よりDNAを抽出し、EhrlichiaおよびAnaplasma特異的スクリーニングPCRを実施した。なおスクリーニング陽性検体については種特異的PCRまたは塩基配列解析を行い、感染種を決定した。その結果、これまで沖縄県にしか確認されなかったAnaplasma platysが、本州と九州から検出された。またこれまでわが国では検出されたことのない新種と思われるEhrlichia遺伝子が本州のマダニから検出された。
3)病原体の分離:兵庫県および徳島県において、野生げっ歯類およびマダニを採取し、そこから病原体の分離を試みたところE.muris類似病原体が分離された。また沖縄県の犬の血液からわが国ではじめてAnaplasma platysの感染が確認された。

研究成果

• [文献書誌] Inokuma, H., Fujii, K., Okuda, M., Onishi, T., Beaufils, J., Raoult, D., Brouqui, P.: "Determination of the nucleotide sequences of heat shock operon groESL and the citrate synthase gene (gltA) of Anaplasma platys for phylogenetic and diagnostic studies"Clinical and Diagnostic laboratory Immunology. Vol.9, No.5. 1132-1136 (2002)
• [文献書誌] Inokuma, H., Fujil, K., Matsumoto, K., Okuda, M., Nakagome, K., Kosugi, R., Hirakawa, M., Onishi, T.: "Demonstration of Anaplasma platys inclusions in peripheral blood platelets of a dog in Japan"Veterinary Parasitology. Vol.110. 145-152 (2002)
• [文献書誌] Shimada, Y., Inokuma, H., Beppu, T., Okuda, M., Onishi, T.: "Survey of ixodid tick species on domestic cats in Japan"Veterinary Parasitology. Vol.111. 231-239 (2003)
• [文献書誌] Shimada, Y., Inokuma, H., Beppu, T., Okuda, M., Onishi, T.: "Ixodid tick species recovered from domestic dogs in Japan"Medical and Veterinary Entomology. Vol.17(In press). (2003)