研究概要 |
わが国の人および猫の血清を用いて,Bartonella henselaeの感染状況をそれぞれ検討した。 猫ひっかき病(CSD)を疑う患者の39.6%(19/48人),呼吸器系疾患の患者3.1%(5/159人),獣医系大学の学生の10.9%(14/129人)がB. henselae抗体(IgG)が陽性であった。また,CSD患者の抗体陽性率は女性が男性に比べ有意に高く(P<0.05),若齢者で高い傾向にあった。CSD患者の抗体陽性率は他のグループに比べ,有意に高く(P<0.001),また,獣医系大学の学生では呼吸器系疾患の患者に比べ抗体陽性率が高かったことから,猫との接触がCSDのリスクファクターとして重要であると思われた。 日本の飼い猫では,8.8%(128/1,447頭)がB. henselae抗体(IgG)が陽性であった。猫の抗体陽性率は1歳以下で8.2%,1-2歳未満で11.5%,2-3歳未満で10.4%,3歳以上で7.2%であった。外猫の陽性率は14.5%と内猫の7.0%に比べ有意に高く(P<0.01),さらに,ノミ寄生のあった猫のB. henselae抗体陽性率は13.5%で,ノミ寄生のない猫の7.4%に比べ有意に高かった(P<0.01)。また,猫の抗体陽性率は北海道の2.O%から沖縄県の24%まで採材した地方により異なっており,北に比べ南西地方に行くほど高い傾向にあった。また,都市部の猫で抗体陽性率は高い経口にあった。 B. henselaeに自然感染した3頭の猫を用い,猫における本菌の持続感染機構について検討した。その結果,猫は回帰性の菌血症とそれに続く抗体上昇を繰り返すことが判明した。さらに,同一の菌血症ピークから分離された株は,ほぼ同じ遺伝子型を示したのに対し,異なるピークから分離された株の遺伝子型はそれぞれ異なることが明らかとなった。これより,猫体内ではそれぞれ異なる遺伝子型の株が交互に出現し,宿主の液性免疫を免れることにより,長期間の菌血症が起こっているものと考えられた。
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