研究概要 |
コプラナーPCBの3,'3,4,'4,5-pentachlorobiphenyl(PCB126)曝露を受けた卵巣におけるAhR, aryl hydrocarbon nuclear translocator(ARNT)およびCYP1A1,ならびに卵胞に発現するFSH受容体,LH受容体,Inhibinα,βA,βBの各サブユニットおよびgrowth differentiation factor(GDF)-9をコードする各mRNAの動態を検索した。 【方法】コーン油あるいはPCB126の1μgまたは3μg/kgをSD系雌ラットに交配前2週間から離乳まで毎日経口投与し,得られた雌出生子を5,15及び24日齢に屠殺して卵巣を採取し,ここから抽出した総RNAからcDNAを合成した。cDNA中に含まれる各種遺伝子発現量をリアルタイム定量PCR装置を用いて測定し,同一試料に含まれるGAPDH mRNA量に対する相対値を算出した。 【結果と考察】AhR標的遺伝子であるCYP1A1 mRNAは,5日齢からPCB126の曝露量に依存して増加し,母動物に投与されたPCB126がAhRを介して出生児の卵巣に直接影響を及ぼしていることが明らかになった。また,inhibinの各サブユニットのmRNAは,15日齢以降の卵巣においてPCB126の曝露量に依存して低下した。その他の遺伝子発現量には日齢による変化は認められたものの,PCB126曝露による明瞭な影響は認められなかった。Inhibinは発育相にある卵胞が分泌することから,コプラナーPCBの経胎盤及び経乳汁曝露は卵胞発育に影響を及ぼすものと考えられた。 レーザーマイクロダイセクション(LMD)法を用いた各発育段階における卵胞の採取については、現在検討中であるが、コントロールラットの卵巣を用いた実験では、原始卵胞と胞状卵胞においてインヒビンの遺伝子発現に差が在る事が確認できたので、今後はLMD法を用いた各卵胞における遺伝子発現への影響を検索する。
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