研究概要 |
コーン油あるいは3,'3,4,'4,5-pentachlorobiphenyl(PCB126)の1μgまたは3μg/kgをSD系雌ラットに交配前2週間から離乳まで毎日経口投与し,得られた雌出生子の卵巣を5,15及び24日齢で採取し、AhR、ARNT、CYP1A1、卵胞に発現するFSH受容体、LH受容体、Inhibinα、βA、βBの各サブユニット、Aromatase、kitリガンド、GDF-9、BMP-15、c-kitをコードする各遺伝子の発現(mRNA)量を定量解析した。 CYP1A1の遺伝子発現量は母動物に投与したPCBの量に比して増加していたが、AhRやARNTの発現に投与の影響を認めなかった。暴露動物の卵巣におけるInhibinαとβAサブユニットの発現量は、15日、24日齢において、対照群に比べ有意に低値を示した。また、FSH受容体とAromataseの発現量は、3μg/kg投与群の15日齢においてのみ有意に減少していた。24日齢におけるLH受容体の発現量は、対照鮮に対し低い値を示した。また卵細胞に発現しているGDF-9、BMP-15あるいはc-kitの遺伝子発現には、暴露による影響を認めなかった。これらの結果より、PCBの垂直暴露は、出生子卵巣の遺伝子発現に直接影響を及ぼすこと、InhibinやFSH受容体といった胞状卵胞に多く発現している遺伝子に、PCBの暴露の影響が強く現れていたことから、PCBが主に胞状卵胞に影響していることが示唆された。 また、平行して行っているレーザーマイクロダイセクション法を用いた各発育段階の卵胞の評価については、退行卵胞と健常卵胞を区別してする必要があるが、これについては連続切片を作成し免疫染色によるInhibinの染色性とHE染色標本を用いた形態観察の組み合わせによって可能であり、いくつかの遺伝子発現を評価し、良好な結果を得た。
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