植物由来多糖の金属イオンとの相互作用に基づくゲル形成を利用し、多糖マトリクス中に磁性金属酸化物がナノスケールで分散した新規ハイブリッド材料の作製と特性解析を行うと共に、関連する多糖/無機ナノ複合系の電磁場機能についても検討を加え、以下の知見を得た。 1.アルギン酸およびアルギン酸/PVAをベースとした磁性複合体 アルギン酸ナトリウム水溶液を出発とし、(1)鉄塩水侵漬によるゲル化、(2)Ca^<2+>(またはBa^<2+>やSr^<2+>)によるゲル中の鉄イオンの部分的なイオン交換、(3)過酸化水素処理による酸化鉄のその場合成、を基本プロセスとして、磁性粒子内包ゲルおよびフィルムを調製しえた。さらに、アルギン酸/ポリビニルアルコール(Alg/PVA)のブレンド溶液から、上記(1)と(2)の段階でホウ酸塩を適宜併用することによって、Alg/PVAをマトリクスとした磁性ゲル・フィルムも作製しえた。得られた試料について、SQUID磁束計による磁化測定を行った結果、Alg/PVA組成、アルカリ処理方法、および温度に依存して、常磁性、超常磁性、強磁性を発現することが判った。なお、PVA成分の存在によってゲルの脆性は大きく改善された。 2.カラギーナンをベースとした磁性複合体 硫酸基を有する電解質多糖カラギーナンのゲル化特性を予備調査し、ι-及びκ-タイプのカラギーナン水溶液から、前記1の(1)-(3)を適宜改変することによって磁性ゲルの調製が可能であることを確認した。今後、SQUIDによる磁化測定に供する予定である。 3.その他の多糖/無機ナノ複合系 無機塩を共存させたセルロースエーテル誘導体の濃厚水溶液を対象に、溶液の白濁ゲル化に及ぼす各種アルカリ金属イオンの効果を序列化すると共に、電磁光学的な機能化を図った。
|