研究概要 |
本研究の目的は、生ゴミの開放型乳酸発酵を例として、複数基質-複合微生物-固液二相系の3つの複雑系からなる発酵過程における解析と制御法を確立することにより、新規な有機廃棄物資源化法としての新機軸を示すことである。具体的には主に以下の3項目について検討し,本年度は次のような結果を得た。 (1)遺伝子プローブを用いた微生物の蛍光検出(FISH)による複合発酵微生物菌叢の解析 全細菌、発酵前期に優勢なβプロテオバクテリア,発酵後期に優勢な乳酸桿菌,乳酸球菌,L-乳酸生成菌群,に対する特異的16SrDNAプローブを用いて生ゴミ乳酸発酵中の分別視覚化を半定量的菌数測定法に応用し,選択的乳酸蓄積には培養12時間程度から最優勢菌群となる乳酸菌が重要であり,その主要乳酸菌がいくつかの種菌を用いた生ゴミの開放系発酵に於いても常にLactobacillus plantarumであることが,設計したLAC722-L, LAC722-LH,及びLplan等のプローブを用いた判定量的なFISH解析によっても明らかになった。また,このことが本開放系発酵において蓄積する乳酸の光学純度が低い原因ともなっていることがっわかった。 (2)高粘度-けん濁系リアクターにおける(人工)生ゴミの培養特性 高粘度-けん濁系専用ファーメンターを設計し、これを用いて生ゴミからの高校学純度L-乳酸の生産株として有望なRhizopus oryzaeのペレット状増殖と高い生産性をもたらす培養条件や生ゴミ中成分特性について検討し,半連続的な培養法を確立した。 (3)膜型混合リアクターシステムを用いた複合基質-複数微生物相互作用の解析と菌叢制御 3台の発酵槽と1台の混合槽を組み合わせることによって、培養液を相互に循環させながら3種類の微生物を別々に培養することができる膜型混合培養システムを構築できた。また,生ゴミから分離したLactobacillus rhamnosusを乳酸菌として、また、モデル微生物としてEscherichia coliとKlebsiella sp.を用いて膜型混合培養を行った結果、検討したpH制御パターンの中では、培養液のpHを6.8に1時間、4.5に2時間として繰り返し上下した場合に、E.coliとKlebsiella sp.の増殖を抑制でき、L. rhamnosusを選択的に増殖させることができた。
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