研究概要 |
生ゴミの開放型乳酸発酵を例として、複数基質-複合微生物-固液二相系の3つの複雑系からなる発酵過程における解析と制御法を確立することを目的として、以下の3項目について検討し,本年度は次のような結果を得た。 (1)遺伝子プローブを用いた微生物の蛍光検出(FISH)による複合発酵微生物菌叢の解析 昨年度までに確立した,乳酸桿菌群特異的16SrDNAプローブを用いて生ゴミ乳酸発酵中の微生物の分別視覚化法(FISH)をさらに応用し,L-乳酸生成菌であるLactococcus lactis (), Lactobacillus rhamnosusとそれぞれに対するプローブ(LAC722-LH, LAC454)を適用して上記種菌の添加効果を開放系pH振動制御発酵で検討したところ,発酵後期にはLplan陽性菌(Lactobacillus plantarum)が優勢となり,蓄積乳酸の光学純度が再低下すること,種菌の有効性は極めて限定的であることが明らかになった。一方,pH振動制御を行わず,中等度好熱菌であるBacillis coagulansを種菌とて温度を高温に制御することで非殺菌開放系で高光学純度の乳酸が著量蓄積することを見いだした。 (2)高粘度-けん濁系リアクターにおける糸状菌の培養特性 設計した高粘度-けん濁系専用ファーメンターを用いてL-乳酸生産糸状菌Rhizopus oryzaeのペレット状増殖と高生産性をもたらす培養条件,生ゴミ中成分特性あるいは貧栄養培地への添加物について検討し,最適化を図った。生ゴミ糖化液などには糸状菌の乳酸発酵を阻害する成分が存在したが,適量の活性炭を共存させることで回避できることが判った。 (3)複合基質-複数微生物系の膜型混合リアクターシステムを用いた相互作用解析 培養液を相互に循環させながら3種類の微生物を別々に培養することができる膜型混合培養システムを構築し,pH振動の制御法を工夫することにより腸内細菌群の増殖を抑制し、乳酸桿菌を選択的に増殖させることに成功した。
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