研究概要 |
生ゴミの開放型乳酸発酵を例として、複数基質-複合微生物-高粘度系の発酵過程を解析し,本年度は以下の結果を得た。 1.遺伝子プローブを用いたFISHによる複合発酵微生物菌叢の解析 Bacillis coagulansを種菌として温度を30-60℃に制御することで非殺菌開放系で任意の光学純度の乳酸が生産でき,50℃以上では高光学純度の乳酸が蓄積することを見いだした。新規プローブを設計して本系にFISHを適用し,37,55℃ではLactobacillus及びB.coagulansの細胞割合から発酵結果を理解できたが45℃では別の要因が存在すると思われた。 2.高粘度-けん濁系における糸状菌の培養特性 高粘度-けん濁系におけるRhizopus oryzaeによる乳酸発酵では,添加水量を減らすことで高濃度の乳酸が得られることが期待されたが,実際には酸素供給と基質・生成物阻害が問題となることが実験的・解析的に明らかとなった。標準生ごみにおいては等量の水の添加が望ましく,特に粘性の高いでんぷん質が多い場合,等量でも全く乳酸が生成せず,生米では9倍量の水添加が最も良かったことから,流下的に原料を供給する方法が考えられた。 3.複合基質-複数微生物系の膜型混合リアクターシステムを用いた相互作用解析 3台の発酵槽と1台の混合槽を組み合わせた膜型混合培養システムを用いて、ビフィズス菌(B.longumまたはB.breve)、乳酸菌(L.rhamnosus)および大腸菌(E.coli)の混合培養を行い、ビフィズス菌に特異的な増殖因子の作用を解析した。また,未殺菌の脱脂米糠の同時糖化発酵による乳酸生産において、植菌した目的の乳酸菌だけを生育させるためには、pHを4.0〜5.0に制御することが有効であった。また、MRS培地の代わりにクエン酸-リン酸緩衝液を用いても脱脂米糠から乳酸を生産できた。
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