(1)独自に開発したDNAファイバー上の複製開始点可視化法の汎用化のため、浮遊系にも適用出来るHypotonic shift法を用いる動物細胞へのヌクレオチドの導入法を確立した。細胞を短時間低張状態におき、その際に標識ヌクレオチドを導入する方法で、浮遊系付着系を問わない方法とすると共に、導入効率の向上、標識の均一化などの利点を示した。 (2)複製フォークの進行速度の解析法を確立した。複製フォークの進行は染色体上でRバンドからGバンドへと移り変わるR/G転換期のS期中期に一旦減速し、後期へ向けて再び加速していくことを示した。 (3)特定ゲノム領域の例として、ヒト人工染色体、21番、13番染色体セントロメアをDNAファイバー上に複製部位を化視化し、セントロメア上の多数の部位から複製が始まることを見出した。また、インプリント遺伝子Igf2の近傍に複製開始部位の存在を見出した。FISHではゲノムの変性を必要とするため、ファイバーの質が低下する。DNA非変性条件下で、細胞核、DNAファイバー上でFISHシグナルが検出できることを見出した。核内シグナルの検出頻度と複製タイミングとの関係から、このシグナルは複製依存的に検出できることを示し、さらにこの方法を複製フォーク検出系と組み合わせ、ヒト1q32を含む特定ゲノム領域にいくつか複製開始部位を見出した。また、その領域内で最初にfireされる複製開始点や遅れてfireされる開始点の存在も見出した。 (4)複製タイミングをファイバー上に確認できるセミファイバーFISH法による複製タイミング判定法を確立し、インプリント遺伝子等がアリル間で非同調的に複製することを検証した。 (5)複製装置・転写装置と核マトリクスの関連性の解析として、発現の転写誘導可能なHSP70遺伝子を解析し、先に、示したインプリント遺伝子と同様に、転写が核マトリクスに結合した転写工場を介して起こるモデルを支持する結果を示した。
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