研究概要 |
心筋L型CaチャネルはAキナーゼを介するリン酸化機構がCaチャネル遺伝子を異細胞に導入するだけではよく再現されない。異細胞で調節が再現できない理由として心筋細胞にはもともと存在しているL型Caチャネル調節因子が異細胞には存在しないことが考えられる。したがって本研究はリン酸化制御の再現を可能にさせるために心筋そのものにCaチャネル遺伝子を導入し機能発現させること目的とした。そのためには1)本来心筋に備わっているCaチャネルと遺伝子導入したCaチャネルを区別、2)ウィルスベクターを用いた生体への遺伝子導入の二つの課題を克服する必要があった。1)においてはラット心筋Caチャネルのイオン選択性フィルター部位をEEEE型からEEKA型およびDEKA型へ変異を行い、イオン透過性とLa^<3+>-ブロックに対する感受性を検討した。EEKA,DEKAのNa^+イオン透過性はCsイオンに比し約10倍となった。またBa^<2+>イオン透過性(Ca^<2+>透過性の目安)はDEKAにおいてまったく消失したのに対し、EEKAにおいてはCs^+に比し56倍の透過性を保っていた。La^<3+>(10μM)に対する感受性はDEKAにおいてはまったく失われていた。その結果我々はNaチャネルと同様のNa^+イオン透過性およびLa^<3+>ブロック抵抗性のCaチャネルを作成することに成功し、心筋細胞に本来備わっているCaチャネルの機能と遺伝子導入したCaチャネル機能を区別する技術を確立した。2)においてはアデノウィルスのE1/E3欠損株にCa_v1.2遺伝子を組み込んだ。ただしウィルス粒子の増幅はならなかった。おそらく導入遺伝子のサイズ(8kb超)が大きすぎることが問題だと考えられる。最近アデノウイルスのE1/E3部に加えfiber gene部分の削除を行いCa_v1.2の遺伝子導入を可能とした報告があった(Ganesan AN et al., BBRC 749-754, 2005)。彼らの方法を十分検討し、今後の研究の参考としたい。
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