研究概要 |
循環調節に関わる交感神経は必ずしも常に同じように活動しているわけではなく、支配する組織・器官の血管床別に活動が異なる(交感神経地域反応Iriki等,1971)。このような事実を説明できる中枢ニューロン構成はいまだ明らかでない。交感神経地域反応は、延髄を含めた上位中枢を構成するニューロン群に、各組織・器官の血管床別のグループが存在し、それらのニューロン群の活動に差異があることに由来すると想定されているが、いまだその証拠はない。 そこで、本研究では、延髄の血管運動中枢を構成するニューロンが機能別に存在することを証明する。1)皮膚血管運動調節ニューロン、2)心臓交感神経活動調節ニューロン、3)内臓血管運動調節ニューロン、4)筋血管運動調節ニューロン、この4種類の網様体脊髄路ニューロンの延髄腹側内での分布の違い、上位中枢からの入力によって生ずる反応の違い、末梢からの入力によって生ずる反応の違いを明らかにすることによって、延髄内心臓血管運動中枢の実体を明らかにすることを目的とした。 麻酔ウサギを用い、実験を行った。皮膚血管運動を調節すると思われる網様体脊髄路ニューロン、心臓を支配する交感神経のプレモータニューロンの同定を試みた。 視床下部体温調節中枢への温度刺激および末梢化学受容器の刺激で、それぞれ皮膚血管運動と心臓機能を調節すると思われる交感神経のプレモータニューロンを吻側延髄腹側から同定することに成功した。皮膚血管運動を調節するニューロンは従来から知られている血圧を調節するニューロンが存在する吻側延髄腹外側ではなくその内側に存在し、吻側延髄腹外側に存在する動脈圧感受性ニューロンの25%が心臓機能を調節するニューロンであると結論された。 吻側延髄腹外側に存在する動脈圧感受性ニューロンの残り75%が内臓血管あるいは筋血管運動を調節するニューロンであると推定されるが、これを証明するところまでは実験が進行しなかった。 今後の問題として残された。
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