研究概要 |
HERGがコードする電位依存性K^+チャネルは心筋活動電位の再分極に重要な役割を演じており,その遺伝的な異常は家族性QT延長症候群の原因となる.また,HERG K^+チャネルは二次性QT延長症候群の原因分子でもある.本研究はHERG K^+チャネルの活性化ゲートを同定する目的で行った. 1.野生型HERG K^+チャネルでは脱分極に伴う電位センサーの動きによって活性化ゲートが開き,過分極ではゲートは開かない.しかし,第6膜貫通領域のプロリン点変異体で野生型とは全く異なり過分極で活性化ゲートが開くチャネルが得られた.同部位の点変異体を作製して検討したところ,疎水性アミノ酸への置換では野生型と同様に脱分極で活性化ゲートが開くが,荷電を有するアミノ酸への置換によって過分極で活性化ゲートが開くという結果を得た. 2.第6膜貫通領域の別のアミノ酸(1.のアミノ酸の近傍)のプロリン点変異体においても過分極で活性化ゲートが開くことが明らかになった.この部位ではアラニンおよびセリンへの置換でのみ脱分極で活性化ゲートが開いた.また,1.と同様に荷電を有するアミノ酸への置換によって過分極で活性化ゲートが開くという結果が得られた. 3.過分極よって活性化ゲートが開く点変異体において,チャネルを流れるイオンの選択性の変化も認められた.このことは重要であり,過分極によって活性化ゲートが開く際にはイオン選択性フィルター部位の構造変化も伴っていることを意味している. 4.K^+チャネルが開孔する際にその部位で曲がると考えられているグリシン残基(2ヶ所)に関する検討から,点変異体で見られる過分極による開孔に2番目のグリシンは関与していないと考えられた. 活性化ゲートの構造は未だ不明であるが,電位センサーと活性化ゲートのカップリングはごく少数のアミノ酸によって決定されている可能性が示された.
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