研究課題/領域番号 |
14370029
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桜井 武 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (60251055)
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研究分担者 |
後藤 勝年 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (30012660)
山中 章弘 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (60323292)
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キーワード | オレキシン / 覚醒 / ナルコレプシー / レプチン / グレリン / 適応行動 |
研究概要 |
われわれは、オレキシン-Aと-Bを摂食行動を制御する神経ペプチドとして発表したが、その後、これらのペプチドは、覚醒の維持・調節にも重要な役割を持っていることが明らかになってきた。とくに、ナルコレプシー患者において、オレキシン神経が消失していることが示されていることから、オレキシン神経の覚醒・睡眠の制御に関わる役割に注目がされている。今年度、われわれは、オレキシンのもつ、「摂食行動の制御」と「睡眠・覚醒の制御」という2つの中心的な生理作用を密接な関係をもつものととらえて、その相互関係を明らかにするべく研究を行ってきた。オレキシン神経に特異的にenhanced green fluorescent protein (EGFP)を発現するトランスジェニックマウスを作成し、蛍光を指標にオレキシン神経を単離して電気生理的な性質をしらべたところ、オレキシン神経は、細胞外グルコース濃度によって活性が変化し、また、グレリンによって活性化、レプチンによって抑制されることが判明した。このことから、動物の栄養状態によってオレキシン神経の活動は変化する、つまり、飢餓状態ではオレキシン神経の活性が上昇し、満腹時には低下する可能性が示された。 動物の行動は、栄養状態によって大きく影響を受けることが知られているが、脳が末梢の代謝情報を感知し、処理する経路については、未知の部分が大きい。オレキシン神経は、動物の栄養状態によって活性を変化させることから、この入力系に関わっている可能性がある。そこで、オレキシン神経を特異的に変性させたマウスを絶食し、行動の変化を野生型マウスと比較したところ、野生型マウスでは、絶食時に著明に覚醒レベルが上昇するのに対し、オレキシン神経変性マウスでは、この反応が欠落していることが明らかになった。これらのことから、オレキシン神経は末梢の栄養状態をモニターし、それに応じて、摂食行動・覚醒を制御していることが示された。
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