研究概要 |
α1-アドレナリン受容体拮抗薬を長期間投与すると,その降圧効果が次第に減弱する,いわゆるトレランスを惹起するが、その機序はまだ十分解明されていない。そこでprazosinをラットに2週間投与し、α1-アドレナリン受容体に対する影響を検討した。その結果,prazosinを投与すると、ラット心臓,脾臓など一部の臓器のα1-アドレナリン受容体が約2倍に増加する(upregulation)ことを見つけた。この変化は,α1-アドレナリン受容体のうち,α1Aとα1Bの2つのサブタイプで認められた。一方,α1A選択的な拮抗薬KMD-3213やnoradrenalinを枯渇するreserpineの処置は,prazosinと異なりuprcgulationを惹起しなかった。この違いを詳細に解析したところ、心臓や脾臓のα1-アドレナリン受容体は構成的に活性化された受容体で,絶えずdownregulationされた状態にあり,インバースアゴニストであるprazosin処置はこの活性を抑制してupregulationを惹起することが明らかとなった。これに対し,KMD-3213はニュートラルアンタゴニストのため、α1-アドレナリン受容体の構成的活性に影響を与えず,従ってupregulationを惹起しないと考えられた。この研究は,トレランスの発生が標的臓器の受容体の活性化状態と密接に関係すること,遮断薬のうちインバースアゴニストのみがトレランスを発生することを明らかにした点で,臨床薬理学的に興味ある知見と思われた。 次に、なぜ一部の臓器でα1-アドレナリン受容体が構成的活性を示すのかを,蛋白質相互作用の面より追究した。実験には,yeast two hybrid法を用い,α1-アドレナリン受容体と相互作用する蛋白質をcDNAライブラリーにおいてスクリーニングし,現在複数個の陽性クローンを得ている。
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