研究概要 |
末梢抵抗血管系には、既知の電位依存性Ca^<2+>チャネル(VDCC)とは全く異なる生物物理学的・薬理学的性質を有する、ニフェジピン非感受性、高電位活性化型Caチャネル(NICC)が優勢に発現していることが、最近の我々の一連の研究から明らかになってきた。そこで、このチャネル蛋白質をコードする遺伝子を同定する目的で、NICCの発現が高いと考えられる腸間膜動脈からmRNAを抽出し、cDNAライブラリーの作成を試みた。条件設定の変更を何度か行った結果、最終的にラット15匹から得られた腸間膜動脈標本から、4.2x10^6cfuの収量をもち、既知のVDCC mRNAが確認できるcDNAライブラリーを得ることができた(α1G,α1H,α1Iに対する2種類の異なるプライマーを用いて、これらの遺伝子の検出を行ったところ、α1G,α1Hに相当する転写産物が確認された)。更に、α1G,α1Hのイオン透過孔を挟む膜貫通部のうちVDCC間で最も相同性の高い領域に対応するプライマーを用いて、これらの遺伝子に類似性のある新規遺伝子の部分配列の検出を試みた。プライマーのアニーリング温度を変えstringencyを落としてPCRを行った結果、それぞれ数本のextra-bandが得られた。更にこのbandを切り出してその配列決定を行いEST等のWebデータベースと参照したが、新規VDCCを示唆する配列を確認することはできなかった。これらの結果から、腸間膜動脈に発現しているNICCは、むしろα1G,α1Hのスプライスヴァリアントである可能性が高くなった。今後は、既に作成したcDNAライブラリーから、全長α1G,α1Hスプライスヴァリアントの単離を行い、これを発現してNICCの電気生理学的性質との比較検討を行うと同時に、またこれらのVDCCのC端に相当するペプチドを抗原としてウサギを免疫し抗血清抗血清を用いて(作成済み)、腸間膜動脈から急性単離した細胞におけるα1G,α1H蛋白質の免疫組織化学による確認。NICC電流に対する阻害効果の確認等を行うことで、NICCの分子基盤を確立していく予定である。
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