Differentiation-inducing factor(DIF)は細胞性粘菌Dictyosteliumが分泌する化学物質で、粘菌の分化を誘導する物質として単離され構造が決定されたが、最近の研究から哺乳類の腫瘍細胞や血管平滑筋細胞にも分化誘導・増殖制御作用を持つことが明らかとなっている。我々はDIFの増殖抑制効果の作用発現機構について検討を行なった。 DIF-3は濃度依存性にHeLa細胞の増殖を抑制し、これはサイクリンD1の分解促進による細胞周期拘束のためであると思われる。また、DIF-3はglycogen synthase kinase-3β(GSK-3β)を活性化することによりこの作用を発揮していることが示唆された。 さらに、DIFの作用機構を検討したところ、この物質がmitogen activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達系にも作用することが明らかとなった。この結果からGSK-3βの活性調節機構について研究を行い、GSK-3βの活性調節に必要なこのタンパク質の216位のチロシンのリン酸化が、mitogen activated protein kinase kinase(MEK)によって行われることを見出した。 DIFによるサイクリンDIの分解促進にはGSK-3βによるサイグリンDIのリン酸化が必要であることが明らかとなったので、現在DIFによるGSK-3βの活性調節機序についてさらに検討するために数種類のGSK-3β変異体の作製を行っている。
|