研究概要 |
ヘムによる転写調節機構をBach1を中心に明らかにした。即ち、細胞内ヘム量が少ない時にはBach1/MafヘテロダイマーがシスエレメントMAERに配位するため、NFE2/Mafヘテロダイマー、Nrf2/Mafヘテロダイマーなどによる転写活性化が行われない。このような調節を受ける遺伝子として、ヘム分解系の律速酵素と云われているヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子(J. Biol. Chem.,278:9125-9133,2003)、また造血細胞分化に必須な役割を果たすβグロビン遺伝子(J. Biol. Chem.,279:5480-5487,2003)などが存在することを明らかにした。 特に、βグロビン遺伝子については、古くからヘム合成と同機して転写が調節されることが知られており、我々も赤血球分化能を失ったマウス赤白血病細胞DR-1クローンを利用して、赤血球型のヘム合成が行われないことが赤血球分化ができない原因であること(J. Biol. Chem.,266:17494-17502,1991)、同クローンにヘムを添加することによりグロビン合成が開始されること(Blood,83:1662-1667,1994)、このクローンではNFE2/Mafヘテロダイマーの機能が正常ではないこと(J. Biol. Chem.,278:5358-5365,1998)などを明らかにしてきた。今回、βグロビン遺伝子がBach1/Mafヘテロダイマーの調節化にあることが明らかになったことは、ヘム量が少ないDR-1クローンにおいてBach1/MafヘテロダイマーがMAERから離脱できず、そのためにNFE2/Mafヘテロダイマーの結合が抑制されて正常な分化が行われないことを示した点で、一連の疑問に最終的な解決を与えたものと考えられる。また、我々は赤血球と最も近縁な造血系細胞である巨核球-血小板系を用いて解析を行い、血小板の形態形成にCrkIとASAP1が関与していることを初めて明らかにした(J. Biol. Chem.,278:6456-6460,2003)。今後、プロテオーム解析を通じて更にメカニズムが明らかになると期待される。
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