研究概要 |
ヘムを介する転写調節因子Bach1に関する機能解析をすすめ、ヘム分解系の律速酵素であるヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子の低酸素応答に本因子が関与することを明らかにしてきた。更に本年度においては、造血細胞において基本的な役割を果たしているβ-グロビン遺伝子の転写調節が本因子の調節下にあることを明らかにした。数十年来ヘムとグロビンがどのように協調的に産生されるかについて、メカニズムが判っていなかったが、今回の研究でヘムがBach1の機能を調節することによりグロビン遺伝子の発現を調節し、ヘモグロビンを産生する上で必要十分な量を合成するという巧妙な仕組みが存在することが明らかとなり、赤血球分化に必須の転写調節に果たすヘムの重要な機能の一端が初めて解明された(J.B.C.,2004)。また、造血系において赤血球ともっとも近縁な細胞である巨核球・血小板系において、血栓止血の最初期にみられる血小板の粘着後の伸展などにアクチン重合は決定的に重要である.血小板のアクチン重合に低分子量Gタンパク質rac活性化が関与することが示唆されてきたが,そのrac活性化の下流の位置するシグナル分子は全く不明であった.我々はrac制御下にアクチン重合を制御するWAVEの3アイソフォームとも血小板に存在し,中でもWAVE1と2が共に豊富であるが,3者とも伸展血小板の葉状突起先端部に位置すること,やはり質量分析も駆使しWAVE制御タンパク質Abi-1,Sra-1やNap-1などが血小板に存在すること,これらがカルパインに基質であることなど血小板のアクチン重合に関する多くの新知見を得た(Blood誌平成17年4月掲載予定).
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