1.PP2CアイソフォームによるSAPK経路の制御機構の検討。 (1)PP2Cβノックアウトマウス 我々はSAPK経路制御因子としてのPP2Cβの生理的意義を明らかにするため、この遺伝子のノックアウトマウスの作製を進めている。PP2Cβ-/+ヘテロマウス間の交配の結果、PP2Cβ遺伝子破壊部位をホモにもつ胚は、第1卵割から第3卵割の過程で致死となり、出生しないことが明らかとなった。 (2)PP2Cεノックアウトマウス PP2Cεの生理的意義を明らかにするため、PP2Cεのノックアウトマウスの作製を試み、すでに、同遺伝子座を破壊したキメラマウスを得ている。 (3)PP2Cδ PP2Cδを細胞に過剰発現させると、TNFαやIL-1依存性のAP-1活性を増強させることから、SAPKシグナル伝達経路のポジティブ制御因子として機能することが示唆された。 (4)PP2Cζ JNKの新規の基質を探索する過程で、PP2CζのSer92及びThr205がJNKによりin vitroでリン酸化されることを見出した。このリン酸化は細胞のanisomycin処理(タンパク質合成阻害ストレス)、またはソルビトール処理(高浸透圧ストレス)によって増強するので、in vivoでもSAPKによりリン酸化されていると考えられる。 2.SAPKシグナル伝達路の足場タンパク質としてのBMPRIIの機能の解明。 最近、我々はTGF-βファミリー受容体の一種である2型BMP受容体(BMPRII)の長いC末端tail部分が、JNK、MKK4/7及びASK1と結合する足場タンパク質としての機能を担うことを見出した。細胞をBMP2で処理すると、JNK及びASK1がBMPRIIにリクルートされ、同時にJNK、ASK1が活性化されることが明らかとなった。
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