1)今回、我々は、新規のPP2CファミリーメンバーであるPP2Cεが、IL-1依存性SAPKシグナル伝達路の制御に関わる可能性について検討したところ、PP2Cεの細胞内発現がSAPKの活性化を抑制することを見出した。我々はすでに、PP2CβがSAPKシグナル伝達路の負の制御因子であることを報告したが、PP2Cεの標的分子が、PP2Cβと同様、MAP3KのTAK1であるという結果を得た。PP2CεはTAK1およびその下流に位置するMKK4やMKK6と複合体を形成するが、IL-1の添加に伴いPP2Cεが複合体からの解離し、続いてTAK1の不活性化に伴い、再会合することが観察された。これらの結果は、PP2Cεが単にTAK1の不活性化状態を維持するというよりもむしろIL-1依存性SAPKシグナルの活性化機構の重要な因子であることを示唆している。 2)我々はSAPK経路制御因子としてのPP2Cβの生理的意義を明らかにするため、この遺伝子ノックアウトマウスの作製と解析を行った。PP2Cβ(-/+)ヘテロマウス間の交配の結果、PP2C遺伝子破壊部位をホモにもつ胚は、第1卵割から第3卵割の過程で致死となった。さらにES細胞を用いたsiRNA解析の結果、PP2Cβの発現量の下により、血清処理によるp38の活性化がさらに亢進することから、PP2CβがSAPK経路の生理的な制御因子であることが、強く示唆された。 3)最近、我々はTGF-βファミリー受容体の一種である2型BMP受容体(BMPRII)の長いC末端tail部分が、JNK、MKK4/7及びASK1と結合することを見出した。細胞をBMP2で処理すると、JNK及びASK1がBMPRIIにリクルートされ、同時にJNK、ASK1が活性化された。これらの結果は、BMPRIIがSAPKシステムの細胞膜局在性の足場タンパク質としての機能を担うことを示唆している。
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