研究概要 |
ヒト肺腺がんの予防、早期発見、治療を目的として我々の提案した肺腺がん組織分類を基盤にヒト肺腺がん切除材料を用いて多くの初期肺腺がんで共通して変化する発現遺伝子、あるいはメチル化部位を網羅的に明らかにする。本年度は以下の研究を遂行した。 (1)組織マイクロダイセクション法を用いた微小材料から高品質なRNAを採取するプロトコールを作成するためにライカのマイクロダイセクションシステムとアークテュルスのマイクロダイセクションシステムの2つのシステムを稼動させ、新鮮凍結組織から顕微鏡下で最も良い条件でRNAを抽出するプロトコールを作成した。 (2)抽出された微量RNAをサブトラクション法による発現遺伝子比較が可能な量のRNAに発現遺伝子の量比を変えずに増幅するためT7 Adapter Ligation PCRF Amplification T7(TALPAT)を導入した。 (3)実際に発現遺伝子のプロファイル検索を限定した系で体験するためにGene Navigator cDNA Array System & Gene Navigator cDNA Array Filter System(TOYOBO CO, LTD)を用いて実験をおこなった。小型腺がんの初期浸潤の形態像の特徴である線維芽細胞の特徴を明らかにするために複数症例(今回は4例)の切除材料の腫瘍部、正常部からそれぞれ線維芽細胞株を作成しRNAを抽出した。これを上記のarray systemにて検索し、それぞれの発現遺伝子プロファイルを作成し比較した。その結果腫瘍部から樹立した線維芽細胞の方が正常部のそれより高発現している遺伝子としてMLH1が、また逆に正常部の線維芽細胞の方が腫瘍部のそれより高発現している遺伝子としてCox1,FGF4R, Smad 3,p120の4つの遺伝子を明らかにした。腫瘍部に存在する特徴的な線維芽細胞には正常部のそれにはない特徴的な発現型があることがわかった。
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