研究概要 |
本年度は以下の研究を遂行した。 1、前年度からの継続で、NNK投与AJマウスに発生した腺腫と正常肺との間でTALPAT-SSH法(T7 Adapter Ligation PCRF Amplification T7、suppression subtraction hybridization)を行いマウス腺腫に特徴的に高発現しているsurfactant apo A(SPA)とlysozymeを単離した。SPAの発現は腺がんが2型上皮細胞から発生するとする現在の考え方を支持するがlysozymeの発現は新しい知見といえる。この結果はMol Carcinogenesisに発表した(Okubo C et al..,42:121-126、2005)。 2、肺腺がんの前がん病変である異型腺腫様過形成由来の不死化細胞株PL16Tと正常気管支上皮細胞株PL16Bとを用いてTLPAT-SSHを行い、PL16Tに特徴的に高発現する遺伝子としてTACSTD2とS100A2を明らかにした。両者の発現を実際の小型腺がん切除例で解析するとTACSTD2は進行に伴って発現頻度が上昇する傾向にあったが、S100A2は逆に漸減する傾向にあった。この結果は論文投稿準備中である。 3、Bronchioloalveolar carcinoma(BAC)型の進行がん(野口type C)症例のBAC部と浸潤部からそれぞれ腫瘍細胞を採取してTALPAT-SSHを行い、浸潤部に強く発現する遺伝子としてBI-1,TACSTD1,MTCO2,FLJ12770の4つの遺伝子を単離した。BI-1については多数の小型腺がん切除例でその発現状態と生物学的意義を解析し、BI-1がBAC型の腺がんに特徴的に発現することを明らかにした。BI-1は腺がんの予後良好のマーカーになりうる。
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