研究概要 |
14-3-3σ蛋白の分布を検討するために、14-3-3σ遺伝子のC末端配列に基づいたペプチドを合成し、これをウサギに免疫し、14-3-3σ蛋白特異抗体を作製した。正常ヒト組織における14-3-3σ蛋白の発現を免疫組織学的に検討した結果、14-3-3σ蛋白は皮膚,食道,子宮頚部等の扁平上皮に強く発現していること、さらに、気管支上皮,乳腺、消化管上皮等にも広く発現していることを明らかにし、この蛋白が上皮細胞に特異的に発現していることを確認した。また、非小細胞性肺癌においては、腺癌よりは扁平上皮癌に強く14-3-3σ蛋白が発現していることを明らかにした。さらに、肺の大細胞性神経内分泌癌で14-3-3σ蛋白発現がほとんど見られず、この癌は小細胞癌に類似していることが明らかとなった。乳癌では、これまでに報告されたように浸潤性乳管癌の大部分で14-3-3σ蛋白の発現が低下していることを確認したが、特殊型とされる扁平上皮癌や粘液癌では発現が保たれていることを見出した。乳癌や小細胞癌では、14-3-3σ蛋白の発現低下はその遺伝子プロモーター領域のメチル化によって引き起こされることが既に報告されている。しかし、非小細胞性肺癌などでは14-3-3σ蛋白発現が保たれていることが多く、遺伝子プロモーター領域のメチル化が見られないことも既に報告された。そこで、大腸癌における14-3-3σ蛋白遺伝子プロモーター領域のメチル化が見られないことを培養株ならびに手術例を用いて明らかにし、大腸癌における14-3-3σ蛋白発現低下は別の機構によることを明らかにし、これまでの報告とは異なる発現低下機構の存在が示唆された。
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