研究概要 |
血管新生過程での細胞間のクロストークの解析と、血管壁の細胞機能の変化、さらにそれを基盤とする分子病態の解明と、これら疾患に対する新規かつ有効な治療法の確立を目指し、主に以下の結果を得た。 1)動脈硬化進展と血管新生;動脈硬化進展の病理形態学的指標の一つとして、VEGF-Cの関与をヒト冠動脈の病理学的検討より明らかにした。また、冠動脈における活動性病変でのTGFβ1/受容体I、II発現とIL-10発現低下の意義や、さらに血管新生抑制因子PEDFの局在様式により動脈硬化内膜内新生に明らかな違いがあることを指摘しその生理学的意義を示唆した。 2)血管新生因子の時空的・機能的階層的クロストーク:虚血、非虚血マウス下肢骨格筋へのVEGF、FGF-2遺伝子導入実験から、FGF-2は内因性VEGF-A,HGF発現のほかVEGF-C,-Dをも誘導することで機能的血管新生を促進し極めて高い救肢効果を持つことを証明した。この血管新生はVEGF機能に依存するが、VEGF単独では必ずしも有効な血流量が得られないことから、機能的血管新生に種々の血管新生因子が階層性を持って時間空間的に複合的、有機的に相互作用していることを示した。さらに、FGF-2によるHGF発現亢進機序はMEKを介した早期発現、p70s6k、Ras/PDGF介在の持続発現機構の調節や、腫瘍性血管新生での宿主側のPDGF系の重要性を解明し、腫瘍細胞側での意義について一部明らかにした。
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