研究課題/領域番号 |
14370079
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
片岡 寛章 宮崎大学, 医学部, 教授 (10214321)
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研究分担者 |
伊藤 浩史 宮崎大学, 医学部, 助教授 (80253847)
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キーワード | 肝細胞増殖因子(HGF) / HGF activator / HAI-1 / HAI-2 / H2RSP / 胃腸管粘膜再生 / 分化 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
胃腸管粘膜の再生修復における分子機構を明らかにするために、特にHGFの活性化調節、膜型インヒビターHAI-1による細胞周囲プロテアーゼ活性の調節、そして新規の細胞分化誘導因子の同定をめざして、平成15年度に引き続き研究を行った。 (1)胃腸管粘膜上皮再生において重要な役割を有するHGFの活性化酵素であるHGF activator (HGFA)の遺伝子を破壊したノックアウト(KO)マウスを作製し、バッククロスを終えた。HGFA KOマウスは正常に生まれ、正常に発育したが、血清中のHGF活性化能は失われた。このマウスを用いて、実験的大腸炎(デキストラン硫酸の経口投与)および実験的直腸潰瘍(酢酸の直腸内注入)を作製し、粘膜再生に対する影響を検討した。HGFA KOマウスにおいては、対照群のマウスと比較して、明らかに粘膜上皮の初期再生、特にrestitutionが遅延した。これにより、強い傷害をうけた腸管粘膜の再生初期においてはHGFAによるHGF活性化が重要であることを明らかにした。 (2)HGFAの活性調節因子として重要な細胞膜結合型プロテアーゼインヒビターであり、消化管粘膜において強く発現しているHAI-1についても、その生体内機能をを明らかにするために、ノックアウトマウスを作製した。HAI-1 KOマウスは胎生約10.5日で致死であり、これは明らかにHGFノックアウトマウスやHGFの受容体であるMETのノックアウトマウスより早い。HGFAノックアウトマウスが正常に生まれてくることも勘案すると、HAI-1にはHGF活性化調節以外の、重要な生体内機能が存在すると考えられる。この胎生致死の原因は、胎盤ラビリンス層形成不全による、胎盤機能不全であることを明らかにした。 (3)HAI-1類似のinhibitorであるHAI-2の遺伝子構造を解析する過程で見出した新規核移行ペプチドH2RSPのマウス実験腸炎組織、ヒト炎症性腸疾患組織、およびヒト大腸癌組織における発現と局在を検討した。その結果、正常粘膜においては、H2RSPが粘膜表層上皮の核内に染色されるのに対し、再生粘膜および癌細胞ではその核移行が認められず、細胞質に局在することが明らかとなった。H2RSPの核移行が細胞の分化に関与する可能性を示唆している。 (4)腫瘍細胞をモデルに、細胞周囲におけるHGF活性化機構の分子機構とその意義を検討し、HGFAによるHGF活性化の重要性を示すとともに、HAI-1の影響について報告した。
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