研究概要 |
本研究は,タイト結合とヒト疾患の関係を解明するため,タイト結合の転写レベルの制御,血管内皮細胞のタイト結合,肝細胞のタイト結合の三つの柱があり,以下に各々の成果をのべる. 1.タイト結合の転写レベルの制御 マウステラトーマF9細胞に核内レセプター型転写因子HNF-4αを発現させると,occludin, claudin-6, claudin-7のタイト結合蛋白の発現が誘導され,タイト結合機能の上昇した.しかし,ZO-1, ZO-2, E-cadherinの発現は変化しなかった.これは,HNF-4αが,タイト結合機能と細胞極性の確立に必要であることを示している. 2.血管内皮細胞のタイト結合 血管内皮細胞にclaudin-1の発現を誘導すると,機能的なタイト結合が再構成されることを示した。さらにMAPキナーゼは,claudin-1タンパクを標的分子としてタイト結合のバリア機能を増強し、claudin-1配列内のThr^<203>がTriton-X100非可溶性claudin-1の量やタイト結合の機能に寄与していることを明らかにした。 3.肝細胞のタイト結合 肝内胆汁うっ滞或いは肝炎により生産される増殖因子及びサイトカインは、肝細胞のギャップ及びタイト結合に対して様々な影響を与えている.初代培養ラット肝細胞に増殖因子(EGF, TGF-β)及び炎症性サイトカイン(IL-1β)を処置した結果、Cx32及びclaudin-1の発現低下或いはclaudin-2の発現増加がみられ、それら発現変化は、MAPK, PI3K, P38MAPKなどのシグナル伝達経路を介して巧妙に制御されていることが示された.
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