心筋梗塞境界部の局所的な形態異常がどのように不整脈発生に寄与するかを解明するため、機能している心臓において、ギャップ結合蛋白であるコネキシン43(Cx43)と細胞内カルシウムイオンの三次元的動態を統合的に把握するため以下の研究を行った。 1.in situカルシウムイメージングによる虚血心筋におけるカルシウム動態の検討 細胞内カルシウム動態から虚血障害心の病態を論ずるため、in situカルシウムイメージングをラット心臓にて行った。灌流停止によって一部の細胞で興奮に同期してCa^<2+>が細胞内を波状伝播する現象(Ca wave)が認められた。さらに、再灌流後にはCa^<2+> transientやCa waveが高頻度で発生し自発性興奮(不整脈)も発生し易くなった。また、Ca waveもCa^<2+> transientも示さない静的細胞(quiescent cell)が斑状に分布し、Ca^<2+>動態の空間的な不均一性を示した。これらの結果から、虚血再灌流により生じる時空的に不均一な細胞内Ca^<2+>の動態異常は、不整脈や不全心の発生基盤として重要な病理学的所見であることがわかった。 2.EBウイルスベクターを用いたCx43-mRFP遺伝子の導入 14年度に従来の方法は効率が低すぎることが分かったので、fluo-3などのカルシウムイオン指示薬と異なる波長特性を持つmRFPをレポーターとして用いてEBウイルスベクターによる遺伝子導入を試みた。Cx43-mRFPを組み込んだEBウイルスベクターを初代培養新生仔ラット心筋細胞に導入し、Cx43-mRFP発現細胞を得られることを確かめた。この後、成獣ラットを全身麻酔下に開胸し、このベクターを心筋組織に経大動脈導入し、Cx43-mRFP発現心を作成した。コネキシンの発現は赤い蛍光で確認でき、ギャップ結合とカルシウム動態を同時に可視化できることが明らかとなった。
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