研究概要 |
寄生虫は単細胞性の原虫と、線虫、吸虫、条虫などの多細胞性の蠕虫とに区別される。一般に、蠕虫に感染するとTh2細胞優位な免疫応答が誘導され、1)IgE、2)好酸球、3)肥満細胞が増加することで蠕虫排除を促進することが知られている。このうち腸管寄生線虫の排虫メカニズムの1つとして、Th2サイトカイン(IL-3,IL4あるいはIL9)の作用で小腸上皮細胞に集積、活性化された粘膜型肥満細胞(mucosal mast cell : MMC)が放出するコンドロイチン硫酸が、粘膜への虫体の接着侵入を阻止する機構が明らかにされている。 IL-18は抗原刺激なしにIL-12の存在下で種々の細胞に作用して、強力にIFN-g産生を誘導する。その結果、リーシュマニアなどの細胞内寄生原虫の排除を促進する。一方、IL-18はIL-2の共存下でT細胞を、IL-3の共存下で好塩基球と肥満細胞を刺激して、Th2サイトカイン(IL-4,IL-9,IL-13)の産生を誘導し、アレルギー性炎症を増強する。更にケラチノサイト特異的IL-18トランスジェニックマウスは、皮膚に肥満細胞を集積し、アトピー性皮膚炎を発症する。そこで、我々はIL-18の生体内投与による小腸粘膜におけるMMCの誘導と、線虫に対する防御作用(排虫促進能)を検討した。 IL-18とIL-2をそれぞれ単独、または同時に14日間C57BL/6マウスに腹腔内投与すると、IL-18+IL-2によって血清中のIL-3,IL-4,IL-13産生は著明に増加する。更にIL-18の投与量に依存して上部小腸上皮のMMCの集積とMMCの活性化の指標となる血清mouse mast cell protease-1 (MMCP-1)値の増加が認められた。IL48によるMMCの集積はCD4^+T細胞を除去したマウスでは認められなかった。しかしstat6欠損マウスでは認められたことから、CD4^+T細胞から産生されたIL4,IL-13以外のIL-3(またはIL-9)の作用でMMCが誘導されることが示唆された。次に、MMC依存的に排虫が促進されるヴェネズエラ糞線虫(Strongyloides venezuelensis : Sv)を用いて、IL-18によって誘導されたMMCの排虫機能を検討した。IL-2+IL-18を前投与したC57BL/6マウスの十二指腸にSv成虫を移入し、24時間後の腸管内成虫数を測定すると、IL-2+IL-18前投与群はコントロール群に比較して著しくSv成虫の腸管粘膜への侵入が阻害されていた。以上の結果から、IL-18は線虫感染防御として作用する機能的なMMCを誘導することが明らかとなった。
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