研究課題/領域番号 |
14370087
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
寄生虫学(含医用動物学)
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研究機関 | 大阪大学 (2003) (財)大阪バイオサイエンス研究所 (2002) |
研究代表者 |
井上 豪 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20263204)
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研究分担者 |
永宗 喜三郎 大阪大学, 微生物研究所, 助手 (90314418)
江口 直美 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究副部長 (10250086)
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
松村 浩由 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30324809)
金久 展子 大阪大学, 大学院・工学研究科, 講師 (20177538)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | トリパノソーマ / リーシュマニア / アフリカ睡眠病 / シーガス病 / プロスタグランジン / 駆虫剤 / フラビン蛋白質 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
本研究では、トリパノソーマ(Trypanosoma brucei、T.cruzi)、リーシュマニア(Leishmania major)などの病原性寄生原虫が持つヒトと薬剤感受性の異なるプロスタグランジン(PG)生合成系の酵素を分子生物学的に同定する。そして、遺伝子ノックアウト原虫の作製により、宿主・寄生虫相関における原虫由来のPGの存在意義を明らかにし、同時に遺伝子組換え型酵素の大量発現系を構築して、寄生原虫のPG生合成系を標的とした新規医薬品の開発の基礎を築くことを目的としている。 本年度は、T.brucei PGF_<2α>合成酵素のX線結晶構造解析およびT.brucei PGF_<2α>合成酵素の酵素学的研究で大きな進展が見られた。これまで大腸菌を用いて発現した遺伝子組換え型のTrypanosoma bruceiプロスタグランジン(PG)F_<2α>合成酵素の結晶化に成功し、研究室系のX線回折システムを用いて2.6Å分解能までのX線回折強度データの収集に成功していたが、結晶化の再現性に問題があったために低温下でのX線回折実験が行えずにいた。T.brucei PGF_<2α>合成酵素の精製方法を改良し、クエン酸を用いた結晶化で再現性よく結晶化することに成功し、第3世代大型放射光実験施設Spring-8において2.1Å分解能と飛躍的に分解能の向上したデータ収集を行うことに成功し、精密構造を得ることに成功した。また、T.bruceiのPGF_<2α>合成酵素の変異体酵素を使った酵素学的研究も併せて行い、本構造を基に検討した結果、アルド・ケト還元酵素に保存されているCatalytic tetradで考えられている反応機構とは異なり、リジン残基を唯一の活性中心アミノ酸として還元反応を触媒することを明らかにした。また、阻害剤リード化合物を1種見出し、阻害剤Tolestatおよび基質フェナンスラキノンとの複合体結晶の作製およびデータ収集を行った。現在、構造解析を行っている。今後、本阻害剤をリード化合物としてさらに強力な阻害剤の開発を行う予定である。 一方、Leishmania majorのPGF_<2α>合成酵素のcDNAクローニングと大腸菌を用いた遺伝子組換え型酵素の発現と精製を行ない、本酵素がT.bruceiのPGF_<2α>合成酵素と免疫交差性を示し、旧世界リーシュマニア(L.major、L.donovani、L.tropica)には存在するが新世界リーシュマニア(L.mexicanaやL.amazonensis)には存在しないことを見出した。さらに、T.cruziのPGF_<2α>合成酵素の精製とcDNAクローニングおよび大腸菌を用いた遺伝子組換え型酵素の大量精製を行い、T.cruziのPGF_<2α>合成酵素はOld yellow protein遺伝子ファミリーに属するフラビン酵素であり、PGH_2以外にも様々な化合物を基質とし、メナディオンやベータタラパコンなどのナフトキノンをセミキノンラジカルに1電子還元してこれらの薬物の殺虫効果を誘発し、ニフルティモックスや4-ニトロキノリン-N-オキシド等の薬物を2電子還元して無毒化することを明らかにした。また、T.bruceiのPGF_<2α>合成酵素遺伝子ノックアウト原虫を作製するために、本遺伝子に対して、ネオマイシンとブラスチシジン耐性遺伝子を用いた相同組換えを行ないヘテロ接合体の作製を終了した。
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