1)コクシエラ抗体価陽性症例における推定感染経路調査 これまで集計したコクシエラ抗体価陽性症例の背景調査(現在100例〜)においては、国外感染の可能性が強く示された症例は2例のみであり、残る大多数の症例は国内において何らかのかたちでコクシエラの曝露をうけているものと考えられた。推定感染経路としては、動物との接触機会を有する症例は半数前後であり、内訳はイヌ、ネコが多数を占めていたが、その他哺乳動物としてはウシ、ヒツジ、シカなどが散見された。哺乳類以外ではトリとの濃厚な接触機会のみ有する症例が3例のみ見いだされた。職業的な曝露背景を有する症例としては獣医師、農業高校の教員などのケースが確認された。食品や医薬品、肥料などからの感染を積極的に疑うような症例はいまのところ見いだされていない。接触動物のコクシエラ保菌調査に関しては、イヌ、ネコにおけるPCR陽性例が数例見いだされている。 2)一般動物調査 官城県内のウシのコクシエラ保菌状況に関しては、約200頭の検討において抗体価陽性例が11.9%確認された。ただしこれら抗体陽性例のなかで口腔スワブ、膣スワブ、胎盤、乳汁などがPCR陽性となるケースは少数にすぎず、集団感染を惹起するような持続排菌症例は実際には稀なものと考えられた。 3)環境由来サンプルの解析 急性Q熱症例の感染源となったペットのイヌの周辺環境調査では、イヌの口腔粘液検体ではPCR陽性となった場合でも、周囲環境のふき取り検体ではほとんどPCRは陽性化してこなかった。 4)その他のアプローチ ハトのフンなどをサンプリングしてコクシエラを含むいくつかの病原体の遺伝子検査をこころみたところ、NESTED PCRにて一部はコクシエラに関してもバンドが認められたが、例えば他のChlamydia psittaciなどと比べると弱い反応しか認められなかった。
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