研究課題
基盤研究(B)
急性Q熱症例および抗体価陽性例における発症背景調査急性Q熱症例(確診例および疑診例)53例およびコクシエラ抗体陽性例131例において、その感染経路に関する情報を整理集積した。Q熱症例のうち国外感染例は数例認められたが、大多数は国内感染例と考えられた。いずれのケースも集団発症の可能性は低く、散発例と判断された。動物との接触機会はQ熱症例の75%で確認され、イヌ、ネコ、ウシなど哺乳類が中心だったが一部ハトやインコなどとの接触後に発症した症例が認められた。発症病型別にみると、トリからの感染例はすべて呼吸器感染症例だったが、哺乳類由来の感染例は肝炎、不明熱などより多彩な病型を呈していた。経過中に人工呼吸管理を要する例も認められたが、死亡例は1例も確認されなかった。一方では明らかな動物との接触機会を有しない症例も散見されたが、これら症例において食品、医薬品、肥料、化粧品など間接的な感染経路の存在を強く示唆するような情報は確認されなかった。コクシエラ保菌動物調査および感染経路調査急性Q熱症例の周囲を中心とした動物調査では、一部でイヌやウシなどの保菌を確認できたが、大量排菌の危険性が危惧されるような症例は見いだされなかった。ハトのフン、食品、鶏糞肥料などを対象としてコクシエラの遺伝子検査を試みたところ、一部弱陽性検体が確認されたが、実際のヒトへの感染源になっている可能性は低いものと推定された。結語急性Q熱国内報告例の感染源としては、多くは患者周囲の哺乳類、一部は鳥類が関与している可能性が高い。一部に感染経路不明な症例は存在するが、それらの症例において食品、医薬品などが少なくとも重要な感染経路となっている可能性は低い。病像的には全て散発例、かつ全例で生存が確認されていることから動物の駆除など過度の対応は不要と考えられるが、今後も疫学的な環視は継続する必要がある。
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