研究概要 |
グラム陰性菌であるSalmonella choleraesuis 31N-1をC57BL/6マウスに感染させると感染7日目をピークとする肝障害が誘導された。NKT細胞が特異的に欠損しているマウス(Jα 281 KOマウス)では,菌の排除能はNKT細胞を有するコントロールマウスと同等であったが,肝障害はほとんど認められず,サルモネラ感染で誘導される肝障害にはNKT細胞が関与することが示された。ナイーブマウスの肝臓のNKT細胞ではToll-like receptor(TLR)2およびTLR4のmRNAの発現が強く認められたが、通常のT細胞にはその発現は認められなかった。またサルモネラ感染後において肝臓のNKT細胞の細胞表面に選択的にFasLの発現が増加した。FasL変異gld/gldマウスでは,菌の排除能はFasLを有するコントロールマウスと有意差は認められなかったが、肝障害は有意に減弱していた。これらの結果から,NKT細胞のTLRはFasL発現を介して肝障害誘導に関与することが示唆された。TLR2とTLR4のいずれのシグナルがFasL発現を誘導するかについて,TLR4のリガンドであるlipid AおよびTLR2のリガンドであるリポ蛋白を用いて、ナイーブマウスのNKT細胞をin vitroで刺激してFasLの発現を調べたところ、リポ蛋白がリピドAに比べてFasL発現の誘導能が高いことが明らかとなった。さらにTLR2 KOマウスでは感染後のNKT細胞におけるFasL発現が増加しなかった。一方、TLR4変異C3H/HeJマウスでは,TLR4を有するマウスと同程度に感染後にFasL発現が有意に増加した。これらの結果から、サルモネラ感染よる肝障害の系では,NKT細胞のTLR2に対するリポ蛋白刺激がFasLを誘導して肝障害をもたらすと考えられる。
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