研究概要 |
リステリア属細菌が産生するヘモリシンに我々が新規に見いだした宿主サイトカイン誘導活性について、リコンビナント蛋白や変異ヘモリシン産生遺伝子組換え菌株を用いて研究し、次のような新たな知見が得られた。(1)リステリア属細菌のヘモリシンであるLLO, ILO, LSOは構造上いずれも4つのドメインから成り、従来知られているヘモリシン活性発現はC末端側のドメイン4に依存するが、サイトカイン誘導活性はN末端側のドメイン1-3だけに依存する。(2)ILOにはドメイン1にあるべきPEST配列が欠如しているためサイトカイン誘導活性が極めて低い。(3)LLOはまずマクロファージを刺激して各種炎症性サイトカインを誘導し、マクロファージ由来のIL-12とIL-18がIFN-γ誘導因子として主としてNK細胞に作用し、内因性IFN-γ産生を起こす。(4)LLOによるサイトカイン誘導活性には、マクロファージ上のTLRが必要であり、とくにTLR4とTLR2の両者が認識と結果的なNF-κB活性化に必要である。(5)TLRを発現しない上皮系細胞に微量LLOが作用しておこるサイトカイン応答は、N末端依存的なTLRを介した刺激によるものとは異なり、膜傷害によるCaイオンの流入に由来するサイトカイン遺伝子発現がおこるためである。(6)LLO完全欠損変異株の樹立に成功し、このL.monocytogenes Δhly株に種々の関連ヘモリシン遺伝子を組み込んだ株を用いてマクロファージへの感染実験を行い、サイトカイン誘導には菌の細胞質への脱出が必須であること、PEST配列を有するヘモリシンが細胞質内で作用することが必要であることが確認された。(7)リステリアがマクロファージに感染すると、hly遺伝子とその上流で制御に関与するprfA遺伝子の発現が亢進することを観察し、さらにその亢進にはマクロファージ活性化により産生される活性酸素が関与することを明らかにできた。
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