研究概要 |
1.バイオフィルム形成の分子遺伝学的・形態学的解析 レジオネラ38菌種50菌株のうちバイオフィルムを形成したのはL.pneumophilaのみで、その他の菌種は形成しなかった。バイオフィルムは、25℃ではガラスへの付着能も強く多糖体マトリックスの中に短い本菌が生息していた。一方、37℃では多糖体マトリックスは少なく、菌体が線維状に伸長して菌体自身で織物のようなバイオフィルムを形成し、線維状の菌は多核であった。 2.レポーター遺伝子を使ったレジオネラ遺伝子発現の動態の研究 不安定GFPがL.pneumophilaのin vitro、細胞内での遺伝子発現の研究に応用できることを明らかにした。現在、細胞内増殖に必要な遺伝子であるicmS, icmT, icmQの発現をin vitroと細胞内で観察している。また、温度依存性プロモーター領域の探索を行った。その結果、1株はicmNのプロモーターであり、icmNノックアウト変異株では25℃での上皮細胞接着能が低下していた。 3.Legionella dumoffiiの上皮細胞内侵入・細胞内増殖機序の解析 トランスポゾン誘導変異によって、マウスのマクロファージ系株化細胞J774の中で増殖できないLegionella dumoffii変異株を作成・選択した。変異株のうちの一株は、トランスポゾンがDj1A遺伝子中に挿入されており、ファゴソームとリソソームの融合を阻害できないことがわかった。Dj1Aは熱ショックタンパクDnaJファミリーの一員であり、Dj1Aが、細胞内寄生菌の細胞内増殖に重要であるとの最初の報告となった。別の1株(KL15)は細胞内侵入能が低下していた。 4.2-deoxy-D-glucose(2dG)がマクロファージ内でのL.pneumophilaの増殖を抑制する機序のマウスDNAマイクロアレイを使った解析 2dG単独ではマウスマクロファージのいくつかのGタンパクの発現を抑制した。L.pneumophilaの感染単独ではToll-like receptor2、TNF-αなどの遺伝子の発現が亢進し、それに2dGを添加すると、これらの遺伝子の発現は抑制された。
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