UL14遺伝子産物は我々が初めて同定し、その性状について明らかにしてきたが、UL14蛋白質の機能についてさらに明らかにするため、UL14発現細胞(14/HEp-2)の性状について非発現細胞と比較検討した。その結果、14/HEp-2はHE-2に比べて、様々なアポトーシスの誘導刺激に対して抵抗性になっていることが判明した。これはcaspase-3活性化やPARPの切断によっても確認された。UL14欠損HSVと野生株との比較から、感染細胞においてもUL14がantiapoptoticに作用している可能性が示唆された。US3遺伝子産物はセリン/スレオニンプロテインキナーゼ(PK)でアポトーシス抑制作用をもつことを明らかにしてきた。中枢神経系のHSV感染におけるUS3の役割を知るために脳定位固定装置を用いたマイクロインジェクション法によりマウス嗅球へUS3欠損ウィルス(L1BR1)を接種し、野生株、US3レスキュー株と比較検討した。嗅覚皮質の神経細胞はいずれの感染でもウイルス抗原陽性となったが、L1BR1感染細胞においてのみ核内が抗phosph-rJNK(Thr184/Thr185)抗体、抗phospho-c-Jun(Ser63)抗体で陽性に染色された。TUNEL法では、L1BR1感染で最も高頻度に陽性(約92%)となったが、野生株や復帰株でも56〜65%の陽性率を示した。以上の観察から、HSV感染による中枢神経細胞のアポトーシスの抑制にもUS3が関与していることが示唆された。我々はウイルス粒子蛋白質のある種のものがアポトーシス誘導因子になりうることを明らかにしてきた。しかし、アポトーシス誘導粒子蛋白質の同定はまだ成功していない。
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