ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)がコードするTaxによるウイルスの転写プロモーター(LTR)活性化について解析し、この転写活性化にはTax以外に細胞側の新規遺伝子産物、TAXREB803が必要であることを明らかにした。TAXREB803は約3000アミノ酸からなりセリン・アルギニンに富む。また、本タンパク質は他のグループによりスプライシングに関係するタンパク質であると報告された。本報告者はTAXREB803の機能を解析して、本タンパク質によるTax依存的な転写活性化にはスプライシングの機能は必要ないことを明らかにした。TaxはCREBと会合してLTRからの転写活性化に働くことが知られている。一方、細胞性CREB応答配列(CRE)を持つ遺伝子にはTaxは働かない。この違いは細胞性CRE配列の隣にあるピリミジンに富む配列の有無によると推定される。実際にLTRのピリミジンに富む配列に変異を入れた場合、Taxの応答はなくなる。一方、TAXREB803はLTR上のピリミジンに富む配列と相互作用している。これらのことから、LTRとTAXREB803の会合、TaxとCREBとの会合、およびCREBとCREとの会合がTaxによるLTRからの転写に重要であることが示唆された。また、Taxにより転写活性化される細胞周期阻害因子、p21の発現亢進は細胞のアポトーシスを抑制するのに重要であることも見いだした。
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