研究課題/領域番号 |
14370102
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
生田 和良 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (60127181)
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研究分担者 |
谷山 弘行 酪農学園大学, 獣医学部, 教授 (90133800)
辻 祥太郎 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (30285192)
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
小野 悦郎 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教授 (00160903)
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キーワード | ボルナ病ウイルス / 中枢神経系疾患 / ストレス / 持続感染 / 神経変性疾患 / HMGB1 / RAGE / リン酸蛋白質 |
研究概要 |
ボルナ病ウイルス(BDV)の神経病原性を誘導する機序を探る目的で、持続感染期に発現が増大するリン酸化蛋白質(P)と結合する宿主因子として、HMGB1(High Mobility Group Box Protein 1あるいはamphoterin)と呼ばれる蛋白質を同定し、すでに報告してきた。HMGB1は、胎生期から成熟期の脳で高い発現が認められる神経突起伸長促進因子である。HMGB1は細胞外に放出されることで、受容体であるRAGE(Receptor for Advanced Glycation End Products)と結合し、その機能を発揮していると考えられている。実際、BDVを感染させた神経系細胞では、HMGB1の作用である神経突起伸長能や細胞遊走能の低下が認められた。また、BDV感染細胞ではHMGB1によるRAGE発現の低下が見られたことから、P蛋白質はHMGB1の細胞外への放出あるいはRAGEとの結合を直接阻害しているものと考えられた。HMGB1とRAGEの結合は、低分子G蛋白質であるCdc42やRacの活性化やRasシグナルおよびJak/Stat伝達系の活性化を引き起こすことが知られており、これらの活性化は、脳内では神経細胞のストレスに対する生存維持やシナプス形成に関与していると考えられ、P蛋白質によるこれらHMGB1機能の阻害がBDVの中枢神経系傷害性に関与している可能性も考えられる。実際、私たちはBDV持続感染細胞において、熱処理などのストレスによる細胞骨格の早期崩壊と回復遅延を観察することができた。
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