1:免疫シナプスに集積し、抗原認識の感受性を制御するケモカイン受容体 CCR5/CXCR3の低分子アンタゴニストは、CD3刺激によるmemory CD8+T細胞の増殖を抑制し、CCR5やRANTES granulesも免疫シナプスに集積し、BRET法を用いてCCR5が実際に活性化されることを明らかにした。また免疫シナプスにおけるLFA-1の活性化には、少なくとも一部は、免疫シナプスに存在するCCR5の活性化に伴うRap1の活性化が重要であることを示した。次に、CCR5/CXCR3ダブル遺伝子欠損マウスを作製することにより、CD8+T細胞増殖におけるケモカイン受容体の重要性をin vivoで確認した。このLFA-1を介したメカニズムは、臓器移植拒絶反応の制御を説明する分子基盤を与え、最近報告された、ヒト腎臓移植におけるCCR5delta32をもつレシピエントの長期予後改善の理論的根拠の一つを与えるものである。 2:ケモカインを標的としたGVHDの回避と選択的GVL/T誘導法の開発 急性腸管GVHDモデルで、ドナーCD8T細胞は、早期に2次リンパ組織で増殖、分化し、後期に腸管浸潤を開始し、陰窩部上皮細胞のアポトーシスが誘導されるが、Fractalkine/MAdCAM-1の中和抗体をGVHD後期に投与する事により、腸管選択的に軽減できた。次に腫瘍細胞P815(H-2^d)をBDF1(H-2^<bd>)マウスに移入し、1日後にB6(H-2^b)マウス脾細胞を移入すると、有意な生存延長を示し、このGVL効果はFractalkine/MAdCAM-1の中和抗体投与により腸管GVHDを軽減した群においても保存された。以上よりCX3CR1-Fractalkine、α4β7-MAdCAM-1を分子標的とした、GVL/T効果を保存したまま選択的にGVHDを軽減する新規な予防、治療法の可能性が示された。
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