遺伝子改変マウスおよびヒト末梢血リンパ球を用いて、ヒスタミン受容体シグナルによる免疫反応制御機構を明らかにした。 (1)ヘルパーT細胞上のヒスタミンH1、H2受容体からのシグナルはヘルパーT細胞の活性化に重要な制御機能を果たしていることを世界で初めて示した。Th1細胞上にはヒスタミンH1受容体が優位に発現されている。一方、Th2細胞上にはH2受容体が優位に発現されている。Th1細胞上のヒスタミンH1受容体からのシグナルはTh1細胞の活性化に正の制御を行い、IFNγの産生を増強させる。一方、Th2型ヘルパーT細胞上に発現されているヒスタミンH2受容体からのシグナルはヘルパーT細胞の活性化を強く抑制し、負の制御を行っていることが示された。すなわち、H2R欠損マウスのT細胞では、サイトカイン産生がいずれも非常に亢進する。以上の結果から、H1受容体とH2受容体が免疫細胞の活性化に対して拮抗的に働いていることがわかった。すなわち、ヒスタミンは即時型アレルギー発症の引き金となっているが、最終的には、Th1細胞を活性化し、Th2細胞の活性化を抑制することにより、アレルギー反応を終息させる効果を持っていることが示唆された。(2)H1R欠損マウスでは、IgEが引き金となる即時型アレルギー反応は殆ど完全に消失する。アレルゲン特異的なIgE抗体を介する初期のアレルギー反応はヒスタミンH1受容体を介して起こることが明快に示された。(3)H1R欠損マウスでは、Th1型自己免疫病のモデルであるEAEの発症が強く抑制されていた。また、SJLマウスのような自己免疫発症マウスではH1Rの変異が見出された。 ヒスタミン受容体からのシグナルが自己免疫病の発症に深く関わっていることを世界で初めて示した。一方、H2R欠損マウスでは肝臓などでの炎症反応の異常な亢進が見られたことから、H2Rからのシグナルは炎症反応を強く抑制する働きを持つことが示された。
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