肥満細胞は自然免疫系でも重要な機能を持ち、細菌性の腹膜炎においてはTNF_の生産を介してケモカインの生産を誘導し、好中球の動員を促す。p85αノックアウトマウスにおいては細菌性腹膜炎に対する感受性が高く、野生型の骨髄からIL-3によって誘導した培養肥満細胞を移植することによって感受性を野生型のレベルまで回復できることを示した。また、肥満細胞は消化管寄生虫の排除にも重要な役割を果たす。そこで、消化管感染寄生虫である糞線虫、Strongyloides venezuelensisの感染における経過を観察した。その結果、p85αノックアウトマウスでは排虫が明らかに遅れ、虫卵の排出も野生型に比較して長期間継続することが明らかになった。この場合、少ないながら腸管に肥満細胞の動員が観察されたため、野生型の骨髄からIL-3によって誘導した培養肥満細胞を移植してS.venezuelensisに対する抵抗性の回復を検討したが抵抗性は回復しなかった。ところが、移植1日前にTh2サイトカインであるIL-4とIL-10で処理した場合には抵抗性が回復した。この結果はTh2反応の重要性を示唆する。そこでさらに所属リンパ節由来のT細胞による抗原特異的なサイトカイン生産を検討したととろ、p85αノックアウトマウスにおいてはTh2サイトカインの生産が優位に低下すること、さらに野生型で見られるIL-3の生産がほとんど見られないことが明らかになつた。これらの結果から、IL-3やTh2サイトカインの誘導不全が消化管肥満細胞の分化異常の原因である可能性が示唆された。さらに解析を進めることにより、Th1/Th2バランスの決定に重要な樹状細胞において、PI3KがTh1誘導サイトカインであるIL-12の発現を負に制御することが明らかとなった。
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