農薬の胎児・新生児移行とその健康影響に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14370118
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 仲井 邦彦 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (00291336)
• 研究分担者: 亀尾 聡美 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40312558) ; 佐藤 洋 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40125571)
• キーワード: 農薬 / 胎児期曝露 / 低濃度曝露 / 神経行動学 / 疫学 / DDT / 内分泌撹乱 / 母乳汚染

研究概要

発生・発達期にあたる胎児期および周産期の脳は、環境要因の変動に極めて敏感であり、特に一部の化学物質に対して胎盤はバリアーの役をなさず児側に移行し、幼弱な脳の正常な発達を阻害する可能性がある。さらにその今日的課題の1つは、曝露量が低濃度であることであり、その健康影響の解明が待たれる。我々はすでに胎児期における化学物質曝露の影響を検証するための出生後の張ったウニ関する疫学的研究を進めており、本研究ではその疫学と連携させ、主に農薬曝露の影響を検証することとした。具体的には、農薬の母体から児への移行の解析、非塩素系農薬に関する基礎資料、特に胎児期汚染が問題となる農薬種の同定、そして健康影響に関する検討である。本年度は生物試料の収集に力点を置き、母児間移行を検証するための試料として、胎盤、臍帯、臍帯血、母乳のペアサンプルを母親の同意を得て収集した。検体数は100組を越えた。これらの新生児行動評価および一般医学的データをカルテから転記し、健康影響評価の指標として用いることとした。主要な交絡要因として、農薬曝露によって甲状腺ホルモンの低下を来すとの報告があるため、すでに甲状腺ホルモン関連指標の分析を終了した。また、新生児の行動科学的な解析を行うことから、母親の喫煙習慣、飲酒歴、職業、学歴などの要因も調査済みである。ただし農薬の分析はまだ未実施であり、次年度の課題となる。具体的な方針としては、食事摂取頻度調査などから数名の母乳を選び、ま詳細な解析を行って分析戦略を確立、その上でサンプル数を増やす。最終的には新生児行動評価との関連性を解析するデータを得ることを目標とする。

研究成果

• [文献書誌] Nakai K, Satoh H: "Developmental neurotoxicity following prenatal exposures to methylmercury acid PCBs in humans from epidemiological studies"Tohoku Journal of Experimental Medicine. 196. 89-98 (2002)
• [文献書誌] 仲井邦彦, 佐藤洋: "内分泌撹乱物質の健康影響に関する疫学研究から"最新医学. 57. 229-235 (2002)
• [文献書誌] 仲井邦彦, 佐藤洋: "鉛と水銀、その古くて新しい重金属の中毒学"医学のあゆみ. 202. 891-894 (2002)
• [文献書誌] Nakamura T, et al.: "A comparative analysis of certified environmental reference materials using CALUXTM assay and high resolution GC/MS"Organohalogen Compounds. 58. 381-384 (2002)
• [文献書誌] Nakai K, et al.: "Effects of perinatal exposure to environmentally persistent organic pollutants and heavy metals on neurobehavioral development in Japanese children : II. Protocol and description of study cohort"Organohalogen Compounds. 59. 389-390 (2002)
• [文献書誌] Nakai et al.: "Polymer drugs in the clinical Stage : Advantages and prospects"S-nitrosylated polyethylene glycol-conjugated hemoglobin derivative as a candidate material for oxygen therapeutics (in press). (2003)
• [文献書誌] Nakai et al.: "NIMD Forum 2002"Effects of perinatal exposures to methylmercury and environmentally persistent organic pollutants on neurobehavioral development in Japanese children : A protocol for the prospective cohort study (in press). (2003)