1.胃がんにおけるホメオプロテインCDX2遺伝子のメチル化と生活習慣要因との関連 消化管がんの発生リスクを明らかにするため、CDX1/2の発現を免疫組織染色で解析した結果、腸上皮化生ではともに高かった。胃がんでは、ともに発現がさがった。次に、CDX2の発現が、腸上皮化生より胃がんで低い理由としてメチル化によるのか否かを調べた。胃がん73例中21例(28.8%)でメチル化を検出した。メチル化と生活習慣要因などとの関連を検討した結果、緑茶や十字科野菜を高頻度に摂取している患者では、メチル化の頻度が低かった。逆に一回の食事量が多い患者では、メチル化の頻度が高かった。この結果は、従来胃がんの発生リスクに関連すると考えられている生活習慣要因が、メチル化に直接関与する可能性を示唆した。 2.CDX2の転写調節能力の解析 腸上皮化生誘導におけるCDX2の役割を明らかにするため、細胞周期を調節するp21と腸特異的粘液であるMUC2に対するCDX2の転写活性化能を調べた。レポーターアッセイなどで、CDX2はp21とMUC2の発現を上昇させた。この結果、CDX2はp21活性化により細胞周期を止め、さらに腸特異的タンパク質を発現させることにより、腸への分化を誘導する可能性が示された。 3.ホメオプロテインPDX1の胃病変における発現解析 胃がんに関与する新たな転写因子を探すため、胃幽門部などで発現しているPDX1の発現を解析した。免疫組織染色を行ったところ、PDX1は幽門腺、偽幽門腺で発現が見られた。胃がんでは高分化型および早期胃がんで、より高かった。従って、PDX1は偽幽門腺と高分化型のがん化に関与している可能性がある。 4.転写因子SOX2の胃における発現解析 SOX2の発現を、免疫組織染色で解析した。胃がんでは、腸型にくらべて胃型でSOX2の発現がより高かった。従って、SOX2は胃の分化・がん化に関与している可能性が示唆された。
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