研究概要 |
2,4-dichlorophenoxyacetic acid(2,4-D)は広く使用されている除草剤であり、内分泌攪乱作用を有する可能性が指摘されている。2,4-Dを投与した雄マウスにおいて、(1)テストステロンの低下(2)精細管上皮組織の障害(3)セルトリ細胞の空胞化が生じることが発見された。peroxisome Proliferator-activated receptor α(PPARα)-nullマウスではテストステロンの更なる低下は認められず、形態学的変化は軽微であった。よって、これらの変化は主にPPARαの活性化を介して生じるものと判断された。これらの現象の機構解明のため、Leydig cellsにおけるコレステロール量の変化および(a)コレステロールの取り込み(b)コレステロールde novo合成、(c)テストステロン合成に関わる主な蛋白の発現について解析した。2,4-D投与により、HMG-CoA reductaseとHMG-CoA synthase mRNAの発現がPPARα依存的に著しく低下し、多分それが主たる原因となり、Leydig cells内のコレステロール,特にコレステロールエステル量が激減したものと思われた。2,4-D投与により、テストステロン合成能力それ自体はあまり変化しないが、precursorであるコレステロール量の減少がテストステロン合成量の低下を生じたものと思われる。一方、constitutive conditionにおけるPPARα-nullマウスでは、テストステロンがかなり低いことがわかった。この低下は、Leydig cellsにおける少なくとも4種のテストステロン合成系の酵素の発現がかなり低いことに由来すると判断された。加えて、HMG-CoA reductaseやHMG-CoA synthaseの発現もかなり低いことがわかった。これらの発見は、PPARαがLeydig cellsにおけるコレステロールおよびテストステロン合成のconstitutive regulationに関与するという新たな生理機能を明らかにした点で重要である。
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